柏洋通信
2019.07.22
柏洋通信VOL98
インテリア・ライフスタイルTOKYO2019に行ってきました。
今回ひときわ目を引いたのは、日本独自の美意識をカタチにしたジャパンスタイルと、今や女性の心を捉えて離さない北欧スタイルです。ジャパンスタイルでは伝統工芸の制作実演を、北欧スタイルではアーティストやデザイナーによるトークショーなど、デザインが生まれ、それぞれの風土の中で育まれ、やがて文化にまで昇華していく過程をより深く理解できる企画に興味を惹かれました。この場を訪れていつもながら感じるのは、デザイン力の素晴らしさです。売らんがためのデザインには、カッコは良くてもあざとさが付きまといます。心ふるえるデザインには、もちろんシンプルで使い勝手の良さもありますが、それ以上に持つ人、使う人の気持ちを高揚させる、ワクワク感があるのだと思います。
今回もFOODISTとネーミングされたコーナーには、数は少ないながらもデザインとパッケージに工夫を凝らした商品が並びました。もちろんガラスびん入りの食品も展示され、当社の製品をお使いのお客様にも出会うことができました。
七島 徹
2019.07.04
柏洋通信VOL97
大七酒造さんを見学してきました。
日本酒通なら知らない人はいない超人気酒蔵が、当社の工場が立地する福島県二本松市にあります。それが大七酒造さんです。
二本松市は酒どころ福島県の中でも、全国区で名の通っている酒蔵が幾つもあることで知られています。日本酒には良いお米と良い水が欠かせません。安達太良山の麓に位置する二本松市は、良質で豊かな水に恵まれ、酒造りの条件が整っていると言えるでしょう。それに加え、大七酒造さんは創業以来の生酛造りの製法を磨き上げることで、今や国内はもとよりワイン(醸造酒)の本場ヨーローパでも数々の賞を受けるなど、世界レベルの評価を確固たるものにしています。
大七酒造さんの太田社長とは日頃から懇意にさせていただいており、かねてより工場を一度見せていただきたいと思っていたのですが、太田社長は自らトップセールスで海外を飛び回る超多忙な方なので、中々スケジュールが合わず、7月1日にようやく実現の運びとなりました。当日は当社もお世話になっている運送会社の方々とご一緒しました。
大七酒造さんは創業1752年、太田社長で10代目を数え、代々当主は七右衛門を名乗ります(現在は9代目のお父様)。
現在の工場は道路の拡幅工事に合わせ、東日本大震災の直前から建て替えが始まり、何期かに分けて工事を進め現在に至っています。工場の外観は日本酒の酒蔵のイメージとはかけ離れた、まるでヨーロッパの古い街並みを髣髴させる優雅な佇まいです。ところが、中に入ると今ではほとんど見かけることのない鋳物でできた羽釜や、昔ながら木桶が据えられるなど、創業以来の伝統的な製法である生酛造りにとことんこだわっていることが見て取れます。
一方で昔ながらの酒造りに固執するだけでなく、独自で最新の技術を開発する新規性も持ち合わせています。原料の米は表面の糠を削り落とすことで、雑味のないすっきりとした味に仕上がります。とはいえ、単に削れば良いというものではありません。現在の主流は米を真ん丸に削っていくのですが、米自体が球体ではないのですから、これでは削りすぎる部分と削り残しの部分ができてしまいます。
そこで大七酒造さんではその難問を解決するため、独自に超扁平精米技術を開発。米のどの部分でも糠を十分に除去できる理想的な精米状態を実現し、お酒の味と風味を飛躍的に高めることに成功しました。
太田社長は「生産能力を大きくしたくて新工場を立ち上げたのではありません。品質を損なうことなく低温で熟成・貯蔵できるスペース(セラー)を確保したかったのです」と言います。それは在庫を抱えることを意味しますから、経営的にはマイナスではあるのですが、特別に吟味して醸した純米酒や吟醸、大吟醸は数年寝かせることで熟成が進み、旨みが増すのだそうです。
近頃琥珀色に変化した古酒も見かけるようにはなりました。それでも日本酒は造りたて、搾りたてが一番うまいと思っていた私には、これはある種の驚きでした。しっかりとした造りだからこそ、時間の経過がお酒をおいしくしてくれるのであって、生半可な造りではそうはいかないとのこと。生酛造りとは、正にそうした骨太な製法なのだと実感したところです。
さらに驚かされたのは、日本酒の熟成方法でした。それはワインなどと同様にガラスびんに充填した後、きちんと管理された冷暗所(セラー)で保管します。タンクに入れたままでは上部の空間に溜まった空気が悪さをし、思ったように熟成が進まないのだそうです。これは我々ガラスびんメーカーの身びいきなどではなく、ガラスびんの容器としての優秀性を証明する例と言えるのではないでしょうか。
良質な日本酒とガラスびんは、切っても切れない関係です。改めてガラスびんの価値を認識させてくれた、うれしい一日となりました。
七島 徹
2019.06.24
柏洋通信VOL96
国際画像機器展2019に行ってきました。
今年も6月13日、みなとみらいにあるパシフィコ横浜で開催された、国際画像機器展2019に行ってきました。この展示会は毎年6月と11月に開催されていますが、年に1回では技術の進歩に追い付けず、最新の機器をタイムリーに紹介するという展示会本来の目的を果たせないことから、年2回の開催にこだわっているのだそうです。
当社の工場でも、製造現場に設置されているカメラの数は年々増える一方です。製品の検査用ばかりでなく、ラインの自動化が進むのに比例し、ラインの稼働状況やトラブルの確認などに、幅広く用いられるようになりました。特にここ数年で国内でも製品の外観検査や異物検査、寸法検査にAIを組み込んだマシンビジョンが急速に利用されるようになり、それにつれて展示会の様子も大きく変化してきたと感じています。
今年はディープラーニングの関連製品を集めた特別コーナーも設けられ、従来からの主役である各種カメラや光源類が脇へ追いやられているとの印象すら受けました。出展している企業の担当者でさえ、「画像機器展とはいえ、メインは今やAIやディープラーニングだね」と苦笑する有り様です。
マシンビジョンの世界では、AIやディープラーニングの進歩とは別に、生産工程の自動化のニーズの中で、従来型のカメラを使った外観検査や異物検査、寸法検査が、当社も含め当たり前のように行われてきました。とはいえ、光を透過するガラスや光を反射する一部の金属など、カメラの解像度や光源に工夫をこらしても、正しく認識することが困難な対象物は意外に多いものです。最終的には目視検査に頼らざるを得ないのが現状で、そうした対象物の画像検査を自動化するのに効果を発揮するのが、ディープラーニングとAIの組み合わせです。
今回は昨年同様、こうしたシステムを商品化している企業の代表の方から、「AIを外観検査や異物検査に用いるコツ」と題したセミナーを受講し、最新の事情に触れてきました。企業ごとに画像検査の対象物や検査現場の環境が異なり、マシンビジョンの課題も様々なことから、従来はシステムの設計からデータ収集、データの学習、学習データの評価、合否判定システムの作成、そしてそれらを照明、カメラを含む検査システムへ組み込むところまで、フルオーダーメイドが当り前でした。
ところが近年ディープラーニングによる画像生成や画像合成技術が格段に上がったことで、数万点も必要とされていた不良サンプルの画像が、数百点レベルまで劇的に減少させることが可能になったとのこと。
こうした加速度的な進歩もあって、今年はAIを組み込んだ外観検査のパッケージソフトが数多く展示され、導入に向けたハードルは格段に低くなっているようです。
AIを導入したからといって、「自分で考えてなんでもうまくやってくれる」ことなどないことは承知しています。しかし、ことマシンビジョンの世界では、ディープラーニングは従来のマシンビジョンが苦手としていた課題について、的確な解決手段を提供できることが改めて理解できました。
我がガラスびん業界でも、既に大手では導入に向け動き出しているようです。当社も業界の流れに遅れをとらないよう、情報収集を怠らず、しっかりと準備をしていきたいと思います。
七島 徹
2019.06.21
柏洋通信VOL95
ISOの更新審査が終了しました。
6月12日から14日までの日程で、当社のISO14001:2015の更新審査が行われました。審査は「マネジメントシステム全体としての継続的な適合性及び有効性、並びに認証の範囲に対する適正性を審査すること」を目的に、本社と二本松工場で同時並行して進められました。
まず初日は朝一番に、私が審査委員からインタビューを受けることから始まりました。同様のインタビューは過去に何回も受けてはいるものの、それでも毎回緊張するものです。経営トップとして当社の現状に対してどのように感じ、どのような問題を課題として捉えているかなどなど、熱くなって語っているうちに、持ち時間の1時間はとうに過ぎていました。
その後は各部門の責任者がそれぞれの活動実績を示しながら審査委員の方々とディスカッションを進め、改善すべき点や今後取り組むべき課題などを確認していきます。結果としてマネジメントシステム全体に影響を及ぼすような、決定的な逸脱行為は認められず、無事審査は終了しました。
幸いなことに大きな改善指摘事項はなかったものの、審査終了後に受け取った報告書を見ると、各部門で概ね同様の問題点が指摘されています。この点については、私も当社のウイークポイントとして常々感じているところです。
原則として各部門の活動は、PDCAに基づいて進めているのですが、計画と実績を比較することで差異や異常を認識できてはいても、到達すべき最終的なゴールが曖昧なため、突っ込んだ分析が行われず、評価が中途半端のままで終わってしまうことが多いのです。
結果として問題の本質を見い出せず、対処療法に終始することになりがちです。これでは本来向かうべき改善の方向性を、見誤ることになりかねません。こうした状況を放置していれば、PDCAを回し続けながら、さらに高いレベルの改善を継続していくという、ISOの本質とはかけ離れたものになるのではと危惧しています。
今回指摘を受けた改善点を真摯に受け止め、次回の更新審査に向けさらに充実した活動になるよう、社員一丸となって取り組んで行きます。
七島 徹
2019.05.27
柏洋通信VOL94
ヘルスフードエキスポ2019に行ってきました。
5月22日から24日の日程で開催された、「ヘルスフードエキスポ2019」に行ってきました。「国際食品添加物展・会議」と同時開催されており、健康食品や機能性食品に関係する多くの企業が出展し、製品開発を手掛ける担当者が数多く集います。私のような容器メーカー、特にガラスびんメーカーの人間には、直接ビジネスに繋がることは少ない場であるとは思いますが、今回は「食の地域ブランド創造ゾーン」の出展もあったため、足を運んだ次第です。尚、今回は東京ビッグサイトの青海展示棟ホールA・Bで行われました。ここはゆりかもめの東京ビッグサイト駅(3月に国際展示場正門駅から改称)のお隣、青海駅のすぐ横に設けられた巨大な倉庫のような建物です。来年は東京オリンピック2020が開催される影響で、長期間使用できなくなる東京ビッグサイトを補完するために建てられたのでしょうか。東京ビッグサイトとは、無料シャトルバスで行き来することができます。
さて、今回私のお目当ては、「食の地域ブランド創生セッション・産学官連携セッション」と題したセミナーを受講することでした。地方自治体が地場の食品の販売促進に向け、健康面にフォーカスした活動を行っていることは見聞きしていましたが、最新の取り組みについて知りたいと思っていたからです。まず冒頭は官を代表して、農研機構 食料ビジネス推進センター・センター長の山本万理先生による基調講演です。山本先生は食品素材と機能性表示について長年研究されてきた方で、2015年に設けられた機能性表示食品制度の実現にも尽力されました。また先生はテレビ番組「世界一受けたい授業」で、緑茶の効能を科学的かつ分かりやすく紹介するなど、マスコミの世界でも広くご活躍されています。
続いて北海道が全国で先駆けて進めてきた、「ヘルシーDo」の活動が報告されました。北海道が食の宝庫であることに、異論を挟む人はいないでしょう。豊かな農産物、畜産物、海産物に恵まれているが故に、それらは一次産品のまま出荷されることが多く、どのように付加価値を付けるのかが悩みの種でした。例えば三重県伊勢名物の赤福餅や、福岡県博多名物の辛子明太子。赤福餅の小豆は十勝産を使用していますし、スケソウダラの魚卵である明太子は、もちろん北海道産です。二つの名物自体は北海道とは縁もゆかりもないものの、使用している北海道産の原料が、味や品質をアピールする強力なブランドになっています。そうした北海道ブランドを活かしつつ、「おいしい・安心・健康」に着目して生まれたのが、北海道食品機能表示制度、その名も「ヘルシーDo」なのです。この制度は北海道内で製造された商品を対象に、「ヒトを被験者として機能性に関する試験が行われていること(一定水準の科学的な根拠があること)」など、一定の基準を満たした商品に、北海道庁が独自に健康に配慮した商品として認定するというものです。その証に「ヘルシーDo」のロゴマークを、商品のパッケージに表示することがきるのです。既に研究で明らかになった機能性成分を活用して認定を受けられることから、自社で研究する手間や時間を省くことができ、道内の企業が参入しやすいことが特徴です。そもそも機能性表示食品制度は届け出制のため、専門機関の審査が必要な特定保健用食品(トクホ)より簡便に健康効果を表示しやすいと言われています。それでも、企業側が自社の責任で科学的根拠に基づいた機能性を表示することになるため、そうした研究論文や文献を集めたり、独自でヒトを対象とした研究データを作成することは、中小企業にとって決して低いハードルとは言えないのが実情です。「ヘルシーDo」はそうした問題を解決すべく、北海道庁が創設した健康志向の食品ブランドだと言えるでしょう。
「ヘルシーDo」は特定保健用食品や栄養機能食品とは異なり、直接効能効果を表示することはできません。また、必ずしも機能性表示食品の要件を満たしていないことから、消費者の混乱を避ける上でも監督官庁である消費者庁との交渉は、難航を極めたとも言います。最終的には官公庁との連絡を密にし、何らかのトラブルが発生した場合には、北海道庁が前面に出て解決に当ることで了承を得たとのことです。北海道が先行して進めてきた、いわば「自治体版機能性表示制度」は、今や全国的な広がりを見せるまでになりました。当日「ヘルシーDo」の次に発表が行われた「ヘルシー・フォー」の取り組みは、正に「ヘルシーDo」をお手本にスタートした、四国四県にまたがる活動です。私はこうした地方発の活動と容器としてのガラスびんは、非常に親和性が高いと考えています。これからも「自治体版機能性表示制度」の取り組みに注目していきます。
七島 徹
2019.05.22
柏洋通信VOL93
14回目の色替えを実施しました。
5月10日から13日の日程で、14回目の色替えを実施しました。今回は茶から透明(白)への変更になります。今回の色替えは、前回2018年10月に行った色替えを踏襲して計画が組まれました。5月10日午前0時に色替えバッチの投入を開始。以後、茶色ガラス用から透明ガラス用へ、調合比率を徐々に調整した原料を、8段階に分けて投入していきます。投入時間は計画と若干の差は生じたものの、5月12日の17時に最終バッチを投入し、その後はカレットの比率を上げながらガラスの状態を慎重に観察していきました。翌14日の9時、予定通り3本ある生産ラインの内の1本で新製品のテスト吹製を敢行、その後本格的に生産を再開しました。その間並行して外部の第三者機関でガラスの色調、比重、組成などを測定し、いずれも透明ガラスの規格内に収まっていることが証明されました。それを受けて14日の13時から、そして翌15日の9時から、順次それぞれのラインで生産が再開されました。
色替えの作業自体ほぼ計画通りに推移したとはいえ、生産の再開に当り、今回は前回に比べ気泡の発生が多く見られました。特に最初にスタートしたラインでの発生が顕著でした。その後他の2ラインがほぼ正常な状態に戻ってからも、しばらく気泡の多い状態が続きました。そのため今回の色替えの検証を行ったところ、色替え期間中の5月12日から13日にかけて、前回に比べて溶解炉の中央部の温度の上昇が緩やかであったことが、外部の専門家から指摘されました。最終的には計画した温度領域に達したものの、そこまで到達するまでに時間を要し、当該温度が維持される時間が計画より短くなったことから、色替えの進捗に遅れが生じたとの見解が示されました。結果として生産再開の時点でのガラスは、透明ガラスのスペックの範囲内にあるとはいえ、前回に比べると不十分な状態であったと推察されます。今後さらに気泡に内包する気体や内容物の解析を進め、原因究明を徹底することで、次回の色替えに備えます。
七島 徹