柏洋通信
Vol.21-40
2017.01.10
柏洋通信Vol.35
【二本松市の賀詞交歓会に出席しました。】(1/10)
明けましておめでとうございます。昨年3月にスタートした「柏洋通信」も早35回を重ねるまでになりました。その間思いがけず、社外の方々から感想や激励をいただきました。当初の予想を超える展開に、うれしいサプライズと元気をいただいた次第です。昨年末はインフルエンザでダウンし、2016年の締めくくりは中途半端になってしまいましたが、 今年も様々な視点から当社の状況や私の考え、思いを発信していく所存ですので、 引き続きお付き合い下さいますよう、よろしくお願いいたします。
さて、2017年1月6日、仕事始めも早々に二本松市の商工会議所が主催する(あだたら商工会と共催)恒例の賀詞交歓会が、 300名上を集めて盛大に開催されました。二本松の政財界の重鎮が一堂に会する貴重な機会だけに、私も毎年欠かさず出席しています。二本松市は当社の工場が立地するだけではなく、創業者の七島長太郎の出身地ということもあって、当社とは何かと縁の深い土地です。二本松市は福島県の中核都市である福島市と郡山市の中間に位置し、国道4号線、JR東北本線が通り、 東北自動車道のインターチェンジも擁する大変利便性に優れた地域です。とはいえ、市の中心部ではシャッターが降りたままの店舗が目立つ、何処も同じ悩みを抱える典型的な地方都市でもあるのです。
あだたら商工会三浦会長の開会の辞に続き、二本松市の新野市長から年頭のご挨拶がありました。その中で市長は開口一番年末から続く原油価格の高騰と、急速に進む円安に危機感を示されました。円安は輸出関連企業にとって、プラスに働くことは言うまでもないことです。日本経済には概ね良い影響をもたらすものですが、極端な動きは様々な局面で手放しでは喜べない状況を引き起こすことになるのでしょう。また原油価格の高騰は、大多数の中小企業にとって重荷になることは明白です。当社のように原燃材料の大部分を輸入に頼り、なおかつマーケットがほぼ国内に限られるとなればなおさらです。
さらに市長は地域経済の活性化に向け、昨年以上に少子化対策の徹底や、外国人観光客の誘致に取り組むことを訴えておられました。地方都市の抱える問題は、そのまま日本全体が直面する問題の縮図だと言うことを、改めて実感したところです。
昨年は英国のEU離脱や米国の大統領選でのトランプ氏の勝利など、大方の予想を覆す結果に大いに驚かされたものですが、 今年はそれに輪をかけて想定外の事態が起こりそうな予感がするのは私だけではないでしょう。今年の為替の動向に限っても、三大メガバンクではさらに120円を超えて円安が進むと見る向きと、 いやいや100円まで円高に戻るという正反対の予測があるそうです。かくも両極端の見方があるとは、如何に今年が先を読みにくい年であるかの証拠なのだと理解した次第です。経営者として想定外に備えることは言うまでもないことですが、一企業ではどうすることのできない外的要因に、 必要以上に一喜一憂することはかえってマイナスでしょう。とにもかくにもまず足元を見つめ直し、目の前のやるべきことに粛々と取り組むことが結果を出す最良の道なのだと信じ、2017年を実りある年にしていきたいと思います。
七島 徹
2016.12.15
柏洋通信Vol.34
【国際画像機器展2016に行ってきました。】(12/15)
横浜パシフィコで12月7~9日の日程で開催された、「国際画像機器展2016」に行ってきました。横浜パシフィコは「みなとみらい」にある見本市会場です。「みなとみらい」は元々造船所や貨物線の操車場などのあった広大な土地を、1980年代から横浜のウォーターフロントとして再開発し、 一挙におしゃれな街へと変貌を遂げました。現在では横浜ランドマークタワーや赤レンガ倉庫街ほか、若いカップルから家族連れやお年寄りまで、幅広い年齢層の人々を魅了する、横浜を代表する観光スポットになっています。
横浜パシフィコで12月7~9日の日程で開催された、「国際画像機器展2016」に行ってきました。横浜パシフィコは「みなとみらい」にある見本市会場です。「みなとみらい」は元々造船所や貨物線の操車場などのあった広大な土地を、1980年代から横浜のウォーターフロントとして再開発し、 一挙におしゃれな街へと変貌を遂げました。現在では横浜ランドマークタワーや赤レンガ倉庫街ほか、若いカップルから家族連れやお年寄りまで、幅広い年齢層の人々を魅了する、横浜を代表する観光スポットになっています。
さて、肝心の国際画像機器展です。カメラ、レンズはもとより画像処理機器・ソフト、光源に至るまで、内外の最新の機器が一堂に会したイベントです。私は数年ぶりの見学となりましたが、そのスケール大きさには圧倒されました。当社にとってもカメラやセンサーは検査機でお馴染みですが、その精度はここ数年で飛躍的に高まっています。また様々な状況に応じた監視カメラの需要の高まりや、ロボットやクルマの自動運転技術の台頭などもあって、 画像処理機器やソフトも目を見張るほどの進歩を遂げています。専門家ではない私にとって、展示物の内容を理解することなど鼻からあきらめているのですが、 これからのトレンドに触れるという意味で、得るものは多かったと感じています。
今回は講演会にも参加してきました。中部大学工学部 ロボット理工学科の藤吉弘亘教授による「Deep Learningによるロボット知覚‐Amazon Picking Challengeにおける取り組み-」です。Amazon Picking Challenge(アマゾン ピッキング チャレンジ)とは、世界的なネット通販大手のアマゾンが主催する、ロボットによるピッキングの競技会です。ピッキングとは皆さんもよくご存知の、伝票に基づき倉庫で様々な商品を取り出していく作業のことです。アマゾンでは商品を発送する上でなくてはならない作業ですが、現在のところ人手に頼らざるを得ないのです。既に限定された商品なら、ピッキングから梱包まで自動化されていることは珍しくなく、多くの倉庫や工場で導入されていることも確かです。 しかしアマゾンで取り扱う商品は、一説によると1億点以上にも上るとか。形状や重量も千差万別です。
素人が考えても、これらの商品のピンキングを完全に自動化することが、どれほど困難であるかは想像に難くありません。アマゾンでは自社の合理化のためだけでなく、広くロボット技術の発展を促すため、こうしたコンペを主催しているのです。 しかもここで培われた技術やノウハウは、オープンにすることが原則となっています。今年で2回目を迎えたアマゾン ピッキング チャレンジは、6月29日~7月3日にかけてドイツのライプツィッヒで開催され、 昨年に引き続き藤吉教授は中京大学と三菱電機との合同チームで連続出場を果たしました。この時の様子はNHKテレビの「プロフェッショナル」でも紹介されていたので、ご覧になった方もいるでしょう。競技のルールは至ってシンプルです。ランダムに置いてある46品種の商品を箱に入れる「ピックタスク」と、 箱に入った12品種の商品を、幾つかに仕切られた棚に収納する「ストウタスク」の二つです。いずれもスピードと正確性を競います。日本からは藤吉教授のチームを含む4チームが参戦。世界各国から集まった精鋭16チームがロボット技術の粋を競い、最終的にはオランダのチームの頭上に栄冠が輝きました。
ピッキングを行うには、①対象物そのものを特定し、その位置と形状を正確に認識する。②対象物を確実にグリップし運搬する。 この二つに尽きるのですが、重なり合って置かれた商品を、一つひとつ区分して認識するのは至難の業。ぬいぐるみや袋入りのタオル、はさみや金網のコップ、ダンベルなどなど、質感も重量も大きく異なる商品を安定的に保持するには、 ロボットアームでもバキュームでも困難を極めます。競技の様子は映像も含めて次のURLにありますので、興味ある方は覗いてみてください。
参照:robonews.net(http://robonews.net/2016/07/02/apc_2016/#more-5252)
人間が全く介在しない自立制御型のロボットには、AIなどに通じるディープ・ラーニング(深層学習)が不可欠なのだそうです。システム自体がデータの特徴を学習し、眼前で起きている事象を認識し分類を行う「機械学習」の手法だとか。既に私の理解の域をはるかに超えてしまっていますが、今後はロボットばかりではなく、クルマの自動運転など幅広い分野に応用されていくのでしょう。当社の梱包工程をロボットが担う日も、そう遠くないかもしれません。今回の講演では、ロボット技術の最先端に触れることのできた貴重な体験となりました。
七島 徹
2016.11.29
柏洋通信Vol.33
【芝浦工業大学の橋田教授と対談をしました。】(11/29)
当社が属している「ガラスびんフォーラム」が、来年で創立50周年を迎える運びとなりました。本団体は中小のガラスびんメーカ7社で構成されています。ドリンク、食品・調味料、酒、化粧品などなど、各社がそれぞれの得意分野で技術と品質を競いつつ、ガラスびんの尚一層の普及に向けて活動を行っています。現在創立50周年に向け、記念誌の準備が佳境を迎えているところですが、当社の紹介ページの中で橋田教授と私の対談という企画が持ち上がり、今回の話になった次第です。
当社と橋田教授とのお付き合いは、今年で4年目を迎えました。橋田教授は東京芸術大学をご卒業後TOTO(株)に入社され、衛生陶器や水栓金具、洗面器などのデザインでグッドデザイン賞を受賞。その後2008年に芝浦工業大学に移られ、現在デザイン工学部デザイン工学科の教授を務めておられます。また学生を指導する一方で、様々な企業と組んで斬新なデザインの製品を次々と世に送り出すとともに、グッドデザイン賞の審査委員を務めるなど、 ご自身が現役バリバリのデザイナーでもあるのです。私は当社の将来展望を模索する中で、たどり着いたのがデザインと機能性の新たな提案でした。しかしながら、当社の力だけではその糸口さえ見えません。その時出会ったのが芝浦工業大学であり、橋田教授だったのです。ここから当社と橋田研究室との産学連携の活動が始まりました。
橋田教授の専門分野はエモーショナルデザインです。美しいもの、心地よいものにはきちんとした理由があります。それを感性デザイン学に基づき工学的に解明し、製品にフィードバックしていきます。そうした観点から見ると、ガラスびんは非常に魅力的で可能性を秘めた素材だと言います。橋田教授の確かな目と、研究室の学生の若い新鮮な感性が一体化することで、これまでの常識に捕らわれない新たな製品が生まれるのです。当社との連携第一号となった「開けやすい食用びん」は、その成功例の一つでしょう。女性や高齢者でも力が入りやすいよう、平行四辺形にした形状が話題を呼び、テレビ東京のWBS「トレンドたまご」でも取り上げられました。様々な理由から市場への投入が遅れていますが、なんとしてでも商品化しなければならないと考えています。
産学連携の意義とは何でしょうか。私は即ビジネスに繋がる製品開発というよりも、企業の可能性を広げるチャレンジの場だと捉えています。斬新すぎる製品は、時としてユーザーの関心の外にあるかもしれません。しかし、営業部門はそもそもヒット商品とは、ユーザーが想像だにしなかった使い勝手やニーズを掘り起こしたものだったことを、忘れてはなりません。製造部門はそうした敢えて造り難い製品を、どのように採算ラインに乗せていくのか、ソフトとハードの両面から追求しなければなりません。こうした一見無謀にも思える挑戦が、柏洋硝子の可能性を広げていくことは言うまでもないことです。今回橋田教授から「面白いデザインなのに、柏洋さんの制約が多すぎて形にできないのは残念」との厳しい一言をいただいたことは、真摯に受け止めなければなりません。
11月21日に「ガラスびんの魅力と未来」(仮題)と題して行われた対談は、最終的にプロのライターの手でまとめられ、来年発行される50周年記念誌のページを飾ることになります。橋田教授と私が話した内容がどのような形にまとめられるのか、今の段階では分かりませんが、 いずれにせよ柏洋硝子の将来に対して、大変示唆に富んだものになることは間違いありません。
最後になりましたが、長時間に渡って忌憚のないご意見を披露していただきました橋田教授に、改めて感謝します。
七島 徹
2016.11.21
柏洋通信Vol.32
【4回目の色替えを実施しました。】(11/21)
色替えも今回で4回目を迎え、茶から白(透明)への2回目のチャレンジとなりました。基本的にはオーバーアクションは行わず、今回も段階を踏んで、徐々に白原料の比率を高めていきます。前回2016年4月に行った再現性を重視しますが、色替え後の原料の溶け具合を向上させるため、 原料に占めるカレット(屑ガラス)の混合率を、前回より早目に規定値に上げて行くことを意図し、全体の計画を立案しました。
11月11日の21時前、第一段階の原料の投入が始まりました。その後計画に則り、段階的に白原料の比率を高めたバッチを投入。11月14日の朝には茶からグリーンに色が変わり始め、15日の朝には淡いグリーンに、そして翌16日の朝にはほぼ透明へと変わりました。その間社内で行った測定では、色調、比重、アルカリ溶出量など、各種データが透明ガラスの基準値内に入ったことが確認されました。さらにサンプルを福島県ハイテクプラザに持ち込み、第三者機関による二重のチェックを経て従来の透明ガラスと同等の品質が証明されたことから、 順次生産を再開する運びとなりました。
当社の色替えも4回を数えるまでになり、私は単に色を替えることだけで満足する時期は過ぎたと感じています。今後色替えの成否は、スムーズに生産を再開できたかで評価すべきだと思います。そのためには、適切な温度管理や設備面のメンテナンスなど、今以上にきめ細かな対応が必要になります。3回目、4回目の色替えで、新たな課題も見えてきました。これからも安定的な色替えを実現するために、私たちの試行錯誤は続きます。
七島 徹
2016.11.14
柏洋通信Vol.31
【インテリア ライフスタイル リビング 2016に行ってきました。】(11/14)
11月7日から3日間の日程で開催された「インテリア ライフスタイル リビング2016」に、昨年に引き続き行ってきました。このイベントは家具を中心に照明や食器、グラス類、その他様々な生活雑貨に至るまで、室内で快適に過ごすためのこだわりのグッヅの数々が、幅広く展示されています。イベントの性格上、ガラスびんに関連する食品や飲料の展示はは極々少ないのは当然ですが、今最も旬な、時代の最先端を行くデザインに触れることのできる機会として、 大変貴重な体験であるとともに、大いに刺激をもらえる場でもあるのです。来場者のほとんどがデザイナーやインテリアコーディネーターなどデザインのプロや、大手百貨店などのバイヤーたちですから、少々場違いなのは否めないのですが。
FOODISTとネーミングされたコーナーは、選りすぐりのパッケージデザインの食品が展示されているエリアです。今年も全国から7社が出展し、その内5社がガラスびんを使用していました。いずれも思わず手に取りたくなるような、センスの良い製品ばかりです。「中身の価値を、それ以上に高めることのできる唯一の容器がガラスびん」という、私の持論が具現化された製品ばかりだと言うと、手前味噌すぎるでしょうか。うれしいことに、今年も当社の製品が並んでいたことを付け加えさせていただきます。
今回出展されていたメーカーの方と、新たな出会いもありました。アメリカからびん詰のハチミツを輸入し、国内で販売されているのですが、アメリカ産は大容量のびんしかなく、 国内のお客様からは「もっと小容量のものが欲しい」との声が数多く寄せられているそうです。まだまだ販売量が少ないので、国内で充填するまでにはいきませんが、ゆくゆくは国産のガラスびんに詰めて販売したいとのこと。アメリカのガラスびんの品質にも、満足いかないとお話されていました。直ちに商売に繋がることはないにせよ、こうした関係を大事に育んでいくことが大切だと感じています。
七島 徹