柏洋通信
柏洋通信
2022.01.27
柏洋通信VOL129
スマート工場EXPOに行ってきました。
ようやくコロナ第5派が収束に向かい、10月以降平穏な日々が戻ってきたと感じたのも束の間、南アフリカに端を発し、一足早く欧米で猛威を奮い始めたオミクロン株は、日本でも年明けから瞬く間に感染が急拡大しました。この文書を書いている時点では、コロナ第6派の真っただ中にあり、1月末に予定していた関西のお客様訪問も延期せざるを得ない事態に陥りました。
今回のスマート工場EXPOは、東京ビッグサイトで1月19日から21日の日程で開催されました。私は東京に「まん延防止等重点措置」が出される直前の20日に行ってきましたが、デルタ株とは異なりオミクロン株は重症化するリスクが少ないと報道されているからか、人出は思いのほか多かったと感じました。逆の見方をすれば、今回の展示の主な内容が、DX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラル、IOT、AI、ロボットなど、日本の産業界にとって切実なテーマであることも関係しているのかもしれません。アフターコロナを見据え、欧米に比べ大きく立ち遅れた日本の経済を、反転させるためのヒントがここにあると言っても過言ではありません。
私は今回、特にカーボンニュートラルに先進的に取り組んでいる企業にフォーカスし、講演会も受講しました。既に我が国も2050年にCo2排出ゼロを宣言しており、カーボンニュートラルは中小企業の当社と言えども他人事ではありません。今までのように当たり前に化石燃料を燃やし、Co2を排出することなどできない時代が間もなくやって来るのです。ガラスびんのようなエネルギー集約型の産業では、今から取り組んでおかなければ事業の継続すら危ぶまれる事態に陥りかねません。そもそもカーボンニュートラルとは、地球の温暖化を防ぐため、悪玉のCo2の排出される量と吸収される量をイコールにして、これ以上大気中のCo2を増やさないことです。そのためには、省エネを徹底した上で化石燃料から再生可能エネルギーや、Co2を排出しないクリーンエネルギーに転換します。それでもCo2を出してしまったら、回収して貯蔵したり、リサイクルして空気中に放出しないようにします。既に燃焼の過程で発生したCo2を回収して水素と結合させ、メタンガスとして新たなエネルギー源に変換することで、持続可能なシステムを実用化した企業も現れています。省エネ技術では世界に冠たる日本ですから、こうした先端技術と組み合わせれば、新たな産業として世界をリードすることも夢ではないと感じたところです。とは言え、現在究極のクリーンエネルギーとして注目される水素やアンモニアも、インフラが整備されなければ日常的に使用することはかないません。現在カーボンニュートラルの実現には、様々な方式が研究されていますが、今後急速に技術が進む中で、どれが主流になるのかが決まるまでには、もうしばらく時間が必要だとも感じました。
今回も東京ビッグサイトにIOT、AI、FAなど、製造現場の生産性を改善する先進の技術が集結しました。そんな中で今回私が目を付けたのは、針が数字を示すアナログメーターをカメラで読み取り、そのデータをデジタル化してクラウド上で管理するというもの。当社も含め多くの中小企業の現場では、今もアナログメーターが現役で活躍しています。現在は人がわざわざ現場に出向いてメーターを目視で確認し、改めてタブレットやパソコンに数値を入力する二度手間、三度手間になっていました。もちろん誤入力する危険性もゼロではありません。最先端の技術が導入できれば越したことはありませんが、中小企業には案外このような、現有設備をそのまま生かせるIOTがうれしいものです。
コロナ第6派の真っただ中、入場するには検温、消毒、マスク着用は必須です。さらに今回は受付も進化を遂げ、コンビニのセルフレジと同様のセルフ受付になっていました。展示会の受付と言えば、従来は窓口ごとに人が配置され、人と人との接触が余儀なくされるばかりでなく、ソーシャルディスタンスとはほど遠い密状態が普通でした。それが今回は受付業務が無人化されていますから、省人化ばかりでなくコロナ感染防止対策としても優れものです。招待状と名刺1枚を機械に通せば、瞬く間にネームプレートが出来上がりました。
七島 徹
2021.12.03
柏洋通信VOL128
産業交流展2021に行ってきました。
11月26日、実に久しぶりに東京ビッグサイトを訪れ、恒例の産業交流展を見てきました。コロナ禍にあっても大規模な展示会は行われていました。それでも第5波が猛威を奮うなか、足が遠のいていたことも事実です。展示会は最新の技術やノウハウに触れることのできる貴重な場であることは、十二分に認識しているつもりなのですが、その間3密の回避を徹底するため、オンラインでの開催に特化した展示会も現れました。講演会やセミナーなら、ユーチューブで時間に縛られずに視聴することは、もはや当たり前になりました。ズームやティームを使えば一対一の商談はもちろんのこと、ある程度の規模のセミナーなら、講師と視聴者が双方向で質疑応答することも可能です。コロナ禍が続くなかで、我々は随分と不自由な生活を強いられてきました。しかし今まで当たり前のように時間をかけて移動し、相対で行ってきたビジネスが、オンラインでも可能であることを経験し、距離と時間に対する考え方が大きく変わってきたことを実感しているところです。こうした状況を背景に、今回の産業交流展は、オンラインとリアルのハイブリッド展示会として開催されました。
さて、産業交流展は東京都を中心に、中小企業を支援する各種団体が主催するイベントです。首都圏の元気な中小企業が一堂に会し、培ってきた技術やノウハウを駆使して生み出した商品を、広く市場に問う場として定着しています。直接ビジネスに結びつく商談ばかりでなく、出展者や来訪者との偶然、必然の出会いから、新たな商品の萌芽が生まれることも期待されます。中小企業の中には、特定の分野においては大手企業に引けを取らない技術を持っていても、関連する技術の広がりがない、デザインへの関心やノウハウに乏しく見せ方が分からない、そして何より肝心のお金がない。こうした三重苦を抱えている企業が多いものです。そのため、自社のブランドを持つまでに至らず、消費者と直接つながることのできない、いわゆる下請け仕事からの脱却が難しいのです。当社もその典型的な例でしょうか。東京都をはじめ主催者に名を連ねる各種団体は、そうした中小企業の悩みに寄り添い、試作品開発のサポートや関連する技術を有する企業同士のマッチング、さらには商品の魅力度を高めるために企業とデザイナーの橋渡しを行うなど、中小企業が自社のブランドを開発し、市場に投入するための様々な支援を行っています。改めて、当社にとっても利用度は高いと感じました。
今回多くの出展企業のなかで特に私が注目したのは、サポートが既に終了して久しい古いパソコンを、ウインドウズ10に置き換えることを商品化している企業でした。中小企業では懐かしのPC-98やウインドウズ7、XPで制御しているロボットや設備が、まだまだ現役で数多く動いています。そうしたロートルの働き者も、何らかのアクシデントでパソコンがダウンしてしまったら、既にサポートが終了してしまっているのでもはやお手上げです。当社もその例に漏れず、そうした時限爆弾を抱えた設備や機器が、現在も戦力として現場を支えているのです。そのため、ネットで中古パソコンを血眼なって探している中小企業は少なくありません。こうした悩みは中小企業ならではのもの。最新の設備をそろえている大企業では、経験することのない苦労でしょう。こうした商品開発は、やはり同じ中小企業として、中小企業の切実なニーズを肌感覚で理解しているからこそできることです。久しぶりに東京ビッグサイトを訪れて、数多くの仲間たちとの出会いから、元気と勇気をもらった一日になりました。
七島 徹
2021.09.22
柏洋通信VOL127
第61期キックオフミーティングが始まりました。
8月1日をもって当社の第61期がスタートし、早一月半が過ぎました。その間9月上旬に行った26回目の色替え(透明⇒茶)も無事終了し、現在特に大きな問題もなく順調に生産を続けています。ここにきてコロナの感染拡大も、第5波が峠を越しつつあるようで、行動制限の緩和が前向きに議論され始めています。これから若い人たちのワクチン接種が進むにつれ、経済も徐々にではありますが、コロナ禍以前の状態に戻ってくることが期待されます。
さて、9月14日より当社の第61期キックオフミーティングが始まりました。今回も昨年同様コロナ禍の中での開催となります。本来であれば全ての従業員が一堂に会し、第60期の決算内容と第61期の利益計画を全員で確認し合う場になるはずでした。しかしながら、現在の状況ではまだまだそれらを許す環境にはなく、やむなく昨年と同様に職場や勤務状況に応じ、16回に分けての分散開催とならざるを得ませんでした。
当社の第60期は、それに先立つ5,6,7月の売上が、コロナ禍の影響もあって前年を大きく下回ったことから、不安の中でのスタートとなりました。それでも巣ごもり需要やネット通販の伸びを取り込むことで、食品・調味料向けの製品が伸長し、売上と利益は計画を若干上回る数字を確保することができました。生産面では2021年2月に発生した大規模地震の影響で、一時的に生産を止めざるを得ないアクシデントに見舞われたものの、通算24回を数えた色替えの経験を活かし、計画を上回る生産高を確保できたことは幸いでした。今期は一転してアフターコロナ、ウイズコロナと呼ばれる新たな状況の下、消費のトレンドが大きく変容することが予想されます。営業面ではこのような動きをいち早く捕らえ、巣ごもり需要に代わる市場のニーズに対応しなければなりません。また生産面では当たり前の話ですが、前期の結果に満足することなく、尚一段高い生産性と品質を追求しなければなりません。いずれにせよ、今期も片時も気の休まる時のない、緊張感を強いられる一年になることは間違いないようです。
七島 徹
2021.08.23
柏洋通信VOL126
定年退職者慰労会を開催しました。
8月19日、全国的にコロナの感染拡大第5波が猛威を奮う中、二本松工場で定年退職者の慰労会を開催しました。例年であればホテルの宴会場で、定年を迎えられた方々を囲む会を盛大に行うところですが、この状況の下ではそのようなことを言っていられません。福島県も現在一部の地域にまん延防止重点措置法が発令され、お盆の帰省をはじめ、人々の集まる様々なイベントが自粛に追い込まれています。幸いなことに、工場の立地する二本松市は対象地域外ではあるのですが、今回はやむなく工場の会議室を会場に、出席者も絞り込み、飲食を伴わない形でセレモニーのみを行うことにしました。
人生ままならないことが多いのは、64年間生きてきた私自身がよく理解しているつもりではありますが、ことコロナに関しては、全く想定外の出来事であるのはもちろんのこと、発生から1年半以上が経過しているにも拘らず、最終的にどのような形で終焉するのか、未だに想像すらできないことに驚くばかりです。本来であれば定年を迎えられた方々に、会社への多大なる貢献に対して感謝の意を表するとともに、飲食をともにしながら、これまで共に培ってきた様々な思い出に話を咲かせる、有意義かつ貴重な時間になるはずであったこの会が、このような形にならざるを得ないことに、残念でならない思いでいっぱいです。そして改めてコロナに対する怒りがこみ上げてくるばかりか、この間打つ手打つ手が全て後手に回っている政府の対応にも、憤りを感じざるを得ません。
「人生100年時代」と言われるようになってもう久しいですが、社会人となり定年を迎えるまでを人生の第一のステージと呼ぶならば、私は以前から人生の幸せとは、実は第一のステージ以上に定年以降の第二、第三のステージが充実してなんぼのものと考えています。そこで定年を迎えられた方々を囲む会も、しばらく前から「定年退職者慰労会」ではなく、むしろ「セカンドキャリア(第二のステージ)のスタートをお祝いする会」とするべきではと考え、社内でもそのように話してきました。同時に定年後も引き続き当社で第二のステージを迎えられる方々が増えている現在、経営者としての私に、充実したステージを提供できるかが問われているとも感じています。
私は定年を迎えられた方々への挨拶の結びで、第一のステージを無地に終えられたことを労う意味で、必ず「ハッピー・リタイア」という言葉をお贈りしています。今回も39年と7ヵ月に渡って勤め上げられた鈴木靖さんに、心を込めてこの言葉をお贈りしました。
七島 徹
2021.07.26
柏洋通信VOL125
IS0の定期審査が終了しました。
7月14日から16日の日程でISO(ISO 14001:2015)の定期審査が行われ、今回も無事合格をいただきました。初日9時からのトップ(社長)インタビューに始まり、本社の営業・経理部長のインタビューへと続き、午後からは二本松工場に舞台を移し、三日間に渡ってそれぞれの部門責任者のインタビューが行われました。審査官から「改善の機会」について幾つかの指摘は受けたものの、マネジメントシステムの根幹に関わる重大な改善指摘事項はなく、曲りなりにも継続してきた活動が、一定の評価を得たものと感じています。
とはいえ、私が社長として当社のISOの取り組みに日々抱いているもやもやとした感覚が、払しょくされたわけではありません。今回の審査では優れた取り組みとして「グッドポイント」に取り上げられたのが、「製品別の原価計算システムの構築」でした。 これは既に取り組み始めて3年以上が経過しており、昨年の定期審査の席上では目立った進展がないとの指摘を受けていました。その後実態にそぐわない個所が見つかり修正作業を続けてきたのですが、未だ本格的な運用には至っていません。今回は未実施を承知の上で取り組み自体が評価されてのことなのですが、今後経営面で大いに力を発揮することを期待しての「グッドポイント」だと理解しています。
今回の審査の詳細については「審査報告書」に譲り、ここでは細かく記すことは避けますが、当社には取り組み自体は大いに評価されても、成果を上げるまでに至っていないものが幾つも存在することを、謙虚に受け止めなければなりません。ISOの審査とは、マネジメントシステムが正常に機能していることを認証するものであって、決して個々の取り組みの成果を保証するものではありません。審査が終わったからといって、ほっとしている間などありません。私たちはそのことを一人ひとりが認識し、成果を得るべくスピード感を持って、取り組みを継続していかなければならないと改めて感じたところです。
七島 徹