柏洋通信
2020年12月
2020.12.21
柏洋通信VOL119
21、22回目の色替えを実施しました。
10月7日から11日の日程で、21回目の色替え(透明⇒茶)を実施しています。基本的には前回までの方法を踏襲しており、原料バッチの組成とその投入回数や、溶解炉の温度管理にも変更点はありません。但し今回は色替え期間を中4日から5日に延長しました。生産性の向上を意図してのトライアルでしたが、これが一定以上の効果を生んだと考えています。ガラス生地の状態が早期に安定したことから、かつてなく気泡の発生が抑えられ、生産再開後の初日から従来を上回る歩留を確保することができました。
11月27日から30日の日程で、22回目の色替え(茶⇒透明)を実施しました。今回も概ね前回の方法を踏襲し、中4日の日程も、バッチの組成とその投入回数にも変化はありません。今回は前回20回目の色替え(茶⇒透明)が非常に良い結果を得たことから、前回の条件や進行方法を、可能な限り再現することを目指しました。しかしながら、結果として前回に比べ色替えの進行に半日程度の遅れが見られ、生産再開後も気泡が減少するまでにある程度時間を要するなど、安定化するまでの遅れが顕著となりました。その後前回との相違点を検証したところ、色替え期間中の引揚げ量が前回より若干少なかったことが判明しました。引揚げ量の差がそのまま色替えの遅れの根本的な原因となるのかは、さらに踏み込んだ議論を待たなければなりませんが、色替え期間中に計画と実際の進行の差異をいち早く感知し、修正を加えられるようにすることが、新たな課題として浮かび上がってきました。ガラスびんの製造工程において、全く同じ条件を再現することは事実上不可能であることから、今回の色替えは次のステップに進む上での貴重な機会になったと考えています。
七島 徹
2020.12.09
柏洋通信VOL118
国際画像機器展2020に行ってきました。
12月2日から4日の日程で、横浜パシフィコを会場に画像機器展2020が開催されました。毎年夏と冬の2回、最新のカメラやセンサーを集めた展示会が行われていましたが、6月に予定されていた画像センシング展はコロナ禍の中で、止む無く中止に追い込まれました。画像機器の進歩のスピードは、日進月歩どころではないことは皆さんもご承知の通り。主催者側では年1回の開催では最新の技術をフォローしきれないと、年2回の開催にこだわってきたのですが、コロナの感染拡大ではそうも言っていられないのが現実です。それでも9月以降、リモート開催も含め3密回避を徹底しつつ徐々に大型展示会が再開されてきたことは、柏洋通信でもレポートした通りです。今回の展示会でも主催者側の配慮には、並々ならぬものがありました。受付での3密を回避するために事前登録が必須です。会場も通常の展示会と比べても出展者の数の割にはかなり広々ととられており、ブースとブースの間の通路は例年の2倍以上のスペースが確保されていました。また入口での検温はもちろんですが、画像機器展だけに展示もされている最新の赤外線カメラを設置されているほどです。
さて、今やカメラやセンサーの認識能力は、AI技術と相まって飛躍的に進歩しています。私たちが身近に感じる最先端の例が、車の自動運転ではないでしょうか。まもなく高速道路などの一定の条件下で全ての操作をシステムに任せることのできる、すなわちハンドルから手を放して走行できるレベル3の実用化が目前に迫っています。こうした技術はむろん車の世界だけでなく、多くの産業分野で活用でき、ガラスびんの検査工程にも導入できることは改めて言うまでもありません。そもそもガラスという素材は光を透過したり反射したりとカメラ泣かせの素材です。ガラスびん業界ではかなり以前から、カメラで欠点を検出する画像検査機が導入されてきました。ガラス表面上の微小な欠点も、光源を工夫しカメラの感度を上げればかなり排除できるようにはなったものの、同時に大量の良品も誤認識して排除してしまうジレンマが付きまといます。結果として、人間の目による検査も併用しなければならないのが現状です。人間の目は確かに対象の微妙な差異を認識し、排除すべきか否かを瞬時に判断する優れた能力を有しています。しかしながら、それでも過労や慣れに伴う判断のブレや、能力に個人差があることも紛れもない事実で、目視検査も万能では有り得ません。ましてやこの人手不足の現状を鑑みれば、あらゆる産業で検査の無人化は喫緊の課題なのです。
画像機器展では機器やソフトの展示やデモンストレーションばかりでなく、原理や操作方法も含めたプレゼンテーションを、別会場でセミナー形式で行っています。今回はその中で、生産工程向けにAIを活用した画像検査システムを提供している企業のセミナーを受講しました。元々ガラスや金属、木材など、カメラで認識するには難度の高い素材を中心に、自動検査システムの開発に取り組んできた企業です。特に木材は自然の素材ですから対象物によって木目は千差万別。木目の良し悪しを判断することは極めて感覚的な作業として、熟練した職人の目に頼らざるを得ませんでした。それをAIを駆使することで、人の目を介さず自動で選別できるようになったそうです。さらには従来AIに学習させるには膨大な数のサンプル画像を必要とし、これがAI導入を妨げる大きな壁となっていました。それを従来に比べ大幅に少ない数百枚程度で可能にしたことで、AIは一気に身近なものになりました。既にこのシステムは某ガラスびんメーカーに納入済みで、検査ラインで実際に稼働をしているそうです。車の自動運転もそうですが、AIの歩みは我々が考えている以上に加速度的に進んでいるというのが実感です。画像機器展と言いつつAIの話題ばかりで恐縮ですが、改めて人の目に頼ることのない完全自動検査システムの実用化は近いと感じたところです。
七島 徹
- 1 / 1