柏洋通信
2021年01月
2021.01.29
柏洋通信VOL121
「第5回スマート工場EXPO」に行ってきました。
1月20日から22日の日程で、東京ビッグサイト青海会場で開催された、「第5回スマート工場EXPO」を覗いてきました。最先端のロボットやAIを駆使した生産管理システムなどの情報収集はもちろんですが、この緊急事態宣言下での大型展示会が、どのように開催されているかにも興味があります。案の定というと主催者の方々には失礼に当たるのでしょうが、私が訪れたのが最終日の午後ということを差し引いても、会場は大勢の人々で賑わっているとは言い難い状況でした。もちろん会場でのコロナ感染防止対策は徹底されています。会場の入り口では全ての入場者に検温が義務付けられ、手指の消毒や三密の回避にも配慮が行き届いています。しかしながら、広大な会場には歯が抜けたように、出展を辞退した企業の空きブースが目につきます。そこには代わりにベンチが置かれているので、広い会場を歩き回って疲れても、休憩場所には事欠かないのですが。さらには、出展したにもかかわらず、そこには人が見当たらず、パンフレットと名刺を入れるボックスがあるだけのブースも。そんな中でも、何とかして成果を上げようとする試みも目にしました。某国立大学のブースでは、説明を求める来場者に対し、ブースに置かれたモニター越しに、リモートで説明する光景がありました。こうした形が緊急事態宣言の下での展示会の、正しい姿かもしれません。リモートでの商談やプレゼンテーションは、今や珍しいことではなくなりましたが、実際に多くのモノを見て、触って、比較して、実感できるのは、リアルな展示会の持つ大きなメリットであることに変わりはありません。いずれにしても、当面は感染の拡大を防ぎつつ、展示会の効果を最大化する試みを続けていかなければならないのだと、再認識したところです。
さて、今回は「三品産業におけるロボット・AIイノベーション」と題するセミナーを受講することができました。三品産業とは一般的に食品、化粧品、医薬品産業を指します。大まかに言えば、いずれの産業も少量・多品種生産が主流です。自動車産業のように流れ作業による大量生産とは真逆の生産方式ゆえに、大型の産業用ロボットが導入しづらい業種と言えるでしょう。当社の業態がそのまま三品産業に当てはまるかと言えば、それほど単純な話ではないのですが、年間300種類以上を生産する当社にとって、いわゆる協働型ロボットの導入事例は、業界こそ違えども大変参考になります。
セミナーの一つ目は、某大手食品メーカーのAIを活用した画期的な原料管理システムの事例です。特筆すべき点は、国内の競合数社を巻き込み、国の支援を受けつつまとめ上げたところだそうです。担当されたのは大手総合電機メーカーから移籍され方ですが、電気メーカー時代は生き残りをかけ、競合する国内メーカーとの間で熾烈な競争に明け暮れていました。しかし、気が付けば真の競合はアジアの他のメーカーに移っており、結局のところ国内メーカーは共倒れに終わってしまいました。当時国内にあった最新鋭の巨大工場は、既に跡形もなく消滅しています。世界に伍して戦うには一社単独でシステムを開発するには限界があり、競合といえども協力関係を結び、国内の金と英知を結集する必要があるとのこと。ここではシステムの詳しい内容は省きますが、今回の事例はその成功例なのだそうです。しかしながら、急遽リモートでの開催に変更になったらしく、準備期間が足りなかったのでしょうか。途中で頻繁に音声が途切れるうえ、資料のパワーポイントが度々フリーズするなど、受講している我々はたまったものではありません。セミナーの内容自体は素晴らしいのですが、「スマート工場EXPO」と銘打っておきながら、とてもスマートとはいえないこの状況に、思わず苦笑せざるを得なかったのは、私だけではないでしょう。
二つ目のプレゼンテーションは、某ロボットメーカーによる三品産業への導入事例です。このメーカーは元々小型ヘリコプターなどの開発を目指していましたが、バブル崩壊を境にそのニーズ自体が消滅してしまったことから、それまで蓄積してきた技術やノウハウを転用し、ロボットの開発に着手したのだそうです。早くから東京大学と組んで二足歩行のロボットを開発するなど技術力には定評があり、人間と一緒に働く協働型ロボットの分野でも先頭を走ってきました。ロボットに道具や治具を持たせることで、仕事の幅を広げるというコンセプトの下、三品業界の多くの企業で導入が進んでいます。ある大手化粧品メーカーの事例ですが、ランダムに置かれた充填済みのチューブ製品を、ロボットがカメラで製品の位置や向きを認識し、次の工程に向け一つ一つ掴んで流れるコンベアの上に置いていきます。その場面で注目したのは、ロボットはカメラで製品の裏と表を認識しますが、裏を向いた製品はコンベヤに直接流さず、あらかじめ設置されている反転装置の上に置くところでした。反転装置は直ちに作動して製品を表に返して コンベヤに流します。ロボットが製品を裏から表に反転させることは可能でしょうが、動きが複雑になって作業のスピードが落ちるのだと理解しました。複雑な工程を簡単な反転装置に委ねることで、コスト面も抑えることができます。別の事例では、従来3人で行っていた選別作業を、二つの腕を持ったロボットを導入することで、一人でこなせるようになりました。何から何までロボットに任せるのではなく、道具や治具を生かしながら、さらに人の力も上手に利用しながら作業の効率を高め、人手不足の解消に役立てるのが協働型ロボットのあるべき姿だと思います。当社にとっても非常に参考になる事例であり、ロボット導入に向けたハードルは、決して高くはないと感じました。
七島 徹
2021.01.26
柏洋通信VOL120
「熔解技術向上プロジェクト」をリモートで開催しました。
1月20日、東京を含む11の都府県に緊急事態宣言が発令されている中、「熔解技術向上プロジェクト」を東京の本社と二本松工場をZoomで結び、リモートで開催しました。前回の緊急事態宣言の際には全国が対象とされ、また講師の先生を東京からお招きしていることもあって、4月、5月の開催は見送らざるを得ませんでした。今回は感染拡大が前回を上回る状況下とはいえ、日々の生産に直結する熔解技術の向上を停滞させる訳にはいかないと判断し、リモート会議の形式で実行に移しました。
新型コロナの感染収束が一向に見えてこない中で、当社でも必要に迫られZoomを使っての会議や商談、打ち合わせが徐々に増えてきました。当初は通信環境の整備も進んでおらず、会議の途中で画面が乱れたり、音声が途切れたりすることが多々あり、満足な意見交換ができない状況も見られました。そもそも私を含め参加する人間の中に、リモート会議に対する懐疑的な思いがあったことも事実です。それでも回を重ねることで意識も確実に変化し、通信機器や環境のさらなる改善もあって、今では大人数での会議も違和感なくこなせるようになってきました。それでも、外部の講師を交えてのプロジェクトは、事前に配布された資料に基づき討議し、アドバイスを受けるだけではありません。むしろその場でホワイトボードに走り書きした略図や簡単な絵を前にして、メンバー全員が喧々諤々、ああでもないこうでもないと議論を戦わせることの方が大きな意味を持つと考えています。そうしたことが、リモートでも無理なく行えるのかが懸念されるところです。
今回のプロジェクトを終えて、とりあえず大きなトラブルなく終えることができた一方で、どうしても余所行きの議論に終始しがちで、望むべき談論風発までには至らなかったというのが正直な感想です。それには新たな機材への投資はもちろんですが、それとともに相対での会議とは異なるリモート会議特有のノウハウを、もっともっと蓄積する必要があるのだと感じました。いずれにしても、コロナ禍に関係なくこれからリモート会議の重要性は高まるばかりです。2月には外部から講師を招いて新たなプロジェクトがスタートします。どのような状況下にあっても活動を停滞させることのないよう、柏洋らしいリモート会議にブラッシュアップし、技術の向上に努めていきます。
七島 徹
- 1 / 1