柏洋通信
2016.11.29
柏洋通信Vol.33
【芝浦工業大学の橋田教授と対談をしました。】(11/29)
当社が属している「ガラスびんフォーラム」が、来年で創立50周年を迎える運びとなりました。本団体は中小のガラスびんメーカ7社で構成されています。ドリンク、食品・調味料、酒、化粧品などなど、各社がそれぞれの得意分野で技術と品質を競いつつ、ガラスびんの尚一層の普及に向けて活動を行っています。現在創立50周年に向け、記念誌の準備が佳境を迎えているところですが、当社の紹介ページの中で橋田教授と私の対談という企画が持ち上がり、今回の話になった次第です。
当社と橋田教授とのお付き合いは、今年で4年目を迎えました。橋田教授は東京芸術大学をご卒業後TOTO(株)に入社され、衛生陶器や水栓金具、洗面器などのデザインでグッドデザイン賞を受賞。その後2008年に芝浦工業大学に移られ、現在デザイン工学部デザイン工学科の教授を務めておられます。また学生を指導する一方で、様々な企業と組んで斬新なデザインの製品を次々と世に送り出すとともに、グッドデザイン賞の審査委員を務めるなど、 ご自身が現役バリバリのデザイナーでもあるのです。私は当社の将来展望を模索する中で、たどり着いたのがデザインと機能性の新たな提案でした。しかしながら、当社の力だけではその糸口さえ見えません。その時出会ったのが芝浦工業大学であり、橋田教授だったのです。ここから当社と橋田研究室との産学連携の活動が始まりました。
橋田教授の専門分野はエモーショナルデザインです。美しいもの、心地よいものにはきちんとした理由があります。それを感性デザイン学に基づき工学的に解明し、製品にフィードバックしていきます。そうした観点から見ると、ガラスびんは非常に魅力的で可能性を秘めた素材だと言います。橋田教授の確かな目と、研究室の学生の若い新鮮な感性が一体化することで、これまでの常識に捕らわれない新たな製品が生まれるのです。当社との連携第一号となった「開けやすい食用びん」は、その成功例の一つでしょう。女性や高齢者でも力が入りやすいよう、平行四辺形にした形状が話題を呼び、テレビ東京のWBS「トレンドたまご」でも取り上げられました。様々な理由から市場への投入が遅れていますが、なんとしてでも商品化しなければならないと考えています。
産学連携の意義とは何でしょうか。私は即ビジネスに繋がる製品開発というよりも、企業の可能性を広げるチャレンジの場だと捉えています。斬新すぎる製品は、時としてユーザーの関心の外にあるかもしれません。しかし、営業部門はそもそもヒット商品とは、ユーザーが想像だにしなかった使い勝手やニーズを掘り起こしたものだったことを、忘れてはなりません。製造部門はそうした敢えて造り難い製品を、どのように採算ラインに乗せていくのか、ソフトとハードの両面から追求しなければなりません。こうした一見無謀にも思える挑戦が、柏洋硝子の可能性を広げていくことは言うまでもないことです。今回橋田教授から「面白いデザインなのに、柏洋さんの制約が多すぎて形にできないのは残念」との厳しい一言をいただいたことは、真摯に受け止めなければなりません。
11月21日に「ガラスびんの魅力と未来」(仮題)と題して行われた対談は、最終的にプロのライターの手でまとめられ、来年発行される50周年記念誌のページを飾ることになります。橋田教授と私が話した内容がどのような形にまとめられるのか、今の段階では分かりませんが、 いずれにせよ柏洋硝子の将来に対して、大変示唆に富んだものになることは間違いありません。
最後になりましたが、長時間に渡って忌憚のないご意見を披露していただきました橋田教授に、改めて感謝します。
七島 徹