柏洋通信
2020.02.17
柏洋通信VOL110
スマート工場EXPOに行ってきました。
2月12日から14日までの日程で、東京ビッグサイトの西ホールで開催された「スマート工場EXPO」を覗いてきました。今年で4回目を迎えるこの展示会は、IOT、AI、FA、ロボットが一堂に会し、現代の製造ラインが抱える様々な課題の解決に欠かせない革新的な技術が網羅されています。また同時に「ロボデックス‐ロボット開発・活用展」と「ウエアラブルEXPO‐ウエアラブル開発・活用展」も開催されました。私が訪れたのは最終日の午後とあって、会場内は大勢の来場者でごった返していました。
特に体験のできるパワーアシストスーツのブースでは、長蛇の列ができるほどの盛況ぶりでした。今やAIやロボットは当たり前の時代になりました。
大手ばかりではなく中小企業にも導入が進むだけに、人々の関心も最新の技術や機器に触れるだけで満足するのではなく、自社のラインに導入することを前提に、ブースの担当者と突っ込んだ話をしている姿をあちらこちらで目にしました。ここでは展示会の詳細には触れませんが、生産性の向上や人手不足対策に、改めて当社もうかうかとはしていられないとの意を強くした1日となりました。
さて、今回のお目当ては自動車のマツダが取り組んだ「製造現場における検査工程のスマート化 IVI実証実験(Deep Learning、AI適用)」と題したセミナーでした。マツダではIVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ 日本機械学会生産システム部門が母体)という組織に加わり、製造現場の課題解決に向けて実証実験を行ってきました。今回の発表はそうしたIVIでの取り組みの一つで、「つながるものづくりアワード2018」で最優秀賞を受賞した内容が基になっています。
当社を含め製造ライン上でカメラによる製品の全数検査は当たり前ですが、誤認識による良品の排除や欠点の見逃しは業種を問わず発生しており、そのため人の目で確認する作業がなくならないのが現状です。ディープラーニングやAIの導入で検査精度は飛躍的に高まっているとはいえ、対象物の素材や形状、検査のスピードによってはまだまだ完全な自動化には程遠いものも少なくありません。マツダでも同様の課題を抱えていました。幾つかの事例が紹介されましたが、その中でボディの目視検査の自動化には、従来からベテランの匠の技(目)が欠かせません。デザイナーが求める色は塗料メーカーの定番色とは程遠いものです。「海の深さのようなブルー」や「宝石のルビーのような輝きのある赤」など、光の加減で微妙に変化する色の違いを認識しなければなりません。またボディラインも単純に直線をつないだものではなく、複雑なカーブが幾重にも重ね合わされて形成されています。こうした単純に数値に置き換えることのできない対象に対し、マシンビジョンにディープラーニングとAIを組み込み、匠の技を自動化していく過程にはワクワクさせられました。もちろんそのまま実際の製造ラインに組み込むことは難しいのでしょうが、近い将来人間の目、しかも匠の目がカメラに代わる日が来ることを確信したところです。
七島 徹