柏洋通信

2016年09月

2016.09.30

柏洋通信Vol.29

 【「グラステック2016」に行ってきました。その2】(9/30)

 グラステックの間隙をぬって、欧州の同業2社を見学する機会に恵まれました。まず9月20日の午後、アルダー社のリューネン工場を訪ねました。リューネンはデュッセルドルフから北東へ100㎞強、サッカーの香川真司選手が所属するチームのあることでも有名な、ドルトムントのすぐ北に位置しています。

◆赤レンガが多用された一見クラシックな外見とは裏腹に、内部は清潔かつ最新の設備が稼働。

◆工場を一通り見学させていただいた後、我々の質問に丁寧にお答えいただきました。

ドルトムントはドイツ有数の工業都市ですから、リューネンも工業地帯の一角かと思いきや、緑あふれる田舎町といった風情でちょっとびっくり。  こんなところにガラスびん工場があるのかという疑問に、背の高い煙突が見えてきてようやく納得できた次第です。工場見学が許可されたとはいえ、場内の撮影は一切禁止とのことで、バスの中から工場の一部を撮影できただけでした。アルダーグループは世界22か国で缶とガラスびんを製造し、ガラスびんではヨーロッパ全域に20の工場を擁するシェア№2の巨大企業です。このリューネン工場は二つの溶解炉を持ち、主に食品向けの広口びんを製造しています。 外観は建物に赤いレンガが使われていたり、かなり年期が入っている印象でしたが、工場内に入るとその思いは一変しました。 とにかく最新の設備と、作業環境が清潔に保たれていることに驚かされました。ガラスびん工場は金型に離型剤を塗る工程が欠かせないことから、油が高温の金型に接すると油煙となって立ち上り、 同時に飛散する油と相まって、製びん機械は言うに及ばず、工場の床、壁、天井に至るまで、油で汚れているのが当り前だと思っていました。

 ところがこの工場では全くそのようなことはなく、我々が訪れるために急遽大掃除を行った形跡もありません。工場長は「清潔な工場でなければ安全も品質も担保できない。清潔な工場でなければ顧客の信頼も得られない」と言い切ります。 そしてその考えの根底には、日本発の5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の思想に基づく、日々の地道な取り組みがありました。アルダーグループでは、5S(ゴエス)は改善(カイゼン)と同様に日本語のままで通じます。我々日本人のお株を完全に奪われ格好です。 「顧客の要望に応えるためにも、フードディフェンスの取り組みを進めていかなければ」との発言が印象に残りました。

 9月22日にはデュッセルドルフを離れ空路イギリスへ。ヒースロー空港経由でスコットランドの首都エジンバラへと向かいました。エジンバラは英国王室ともゆかりの深い、とても歴史ある街です。旧市街と新市街の美しい町並みは、世界遺産に登録されていることでも有名です。

 
◆どこを歩いても歴史を感じさせるエジンバラの重厚な街並みに、一同すっかり魅了されました。


◆モダンですっきりとした外観が印象的。残念ながらリューネン工場と同様に、工場内部の撮影は一切許可されませんでした。

◆シェパード工場長と日本ガラスびん協会技術顧問の岩本氏。岩本氏には通訳と技術的解説ですっかりお世話になりました。

 さて、翌21日は陸路をバスで一路西へ。アルダー社のアーバイン工場を見学するため、グラスゴーを経て百数十キロ移動して目的地のアーバインに着きました。 この地はクライド湾に面し、セーターで有名なアラン島は目と鼻の先、さらに進むと対岸はもう北アイルランドです。アーバイン工場はスコッチの名産地のお膝元だけあって、主にウイスキーやジン、ウオッカなどのお酒向けの細口びんが主力です。透明とグリーンの二つの溶解炉を擁し、イギリスでは№1の生産量を誇っています。

 アーバイン工場は溶解炉の改修工事を行ってからまだ数年とのこと。熔解炉はもちろんのこと、製造工程、検査工程、梱包工程でも最新の技術に基づく設備が導入されており、うらやましい限りです。 特に検査・梱包工程では自動化が進み、現場で見かける作業員はほんの数名程度です。ここでも5Sの取り組みは浸透しており、先に見学したリューネン工場同様に、整理、整頓、清掃が徹底されていました。改めて5Sは、アルダーグループ一丸となっての取り組みであることが、理解できました。また、ISOの最新の認証規格も取得するなど、品質に対する意識も極めて高いと感じました。工場長の「今では我々も日本品質です」の発言に、海外のガラスびんに対する認識を新たにした次第です。

代表取締役社長
七島 徹

2016.09.30

柏洋通信Vol.28

【「グラステック2016」に行ってきました。その1】(9/30)

 9月19日から25日にかけて「日本ガラスびん協会」が主催する欧州視察ツアーが行われ、私も参加しました。

 これはドイツのデュッセルドルフで20日から23日の日程で開催される「グラステック」に合わせて企画されたもので、 業界大手のトップも含む総勢17名が集まりました。「グラステック」とは2年毎に開催されるワールドワイドな見本市で、ガラスびん業界のみならず、 板ガラスも含む広くガラス産業全体を網羅する大規模なイベントです。ガラス製造機器・技術、溶解炉の設計・施工、各種耐火物、金型、検査器・制御技術などなど、 ガラスの最先端技術からこれからのトレンドに至るまで、今注目すべきガラスの全てに触れることのできる貴重な場として、 前回に引き続き若手の課長を伴い行ってきました。

 某大手の技術部門のトップの方に言わせると、「今回のグラステックはわくわく感がないね。目新しい技術も少ないし」とのことですが、私たちにとってはどれも興味深いものばかり。今回私たちが注目したのは検査機でしたが、トレンドは複数のカメラを多角的に配置し、 ガラスびんに一切触れることなく360度検査するものでした。人工知能を駆使し、びん表面に印された模様や金型番号を、ガラスに練り込まれた異物や気泡、 ひびなどと区別して認識します。製品が替わるたび行わなければならない細かい調整作業も、大幅に自動化され時間短縮が図られています。

 最新の製びん機械は各社がデモ機を持ち込んでアピールに余念がありません。サーボモーターで各部を駆動する機構は既にお馴染み。 いずれも安全性を重視したカバーが設置され、重量物である金型の交換作業を補助するクレーンが標準装備されているものも見受けられました。 さらにはカメラとセンサーがセットされ、カメラで金型の任意の部分にフォーカスして温度を測定する機構など、作業員の安全と負担を軽減する傾向が益々顕著です。年々自動化が進んできた製びん工程ですが、金型に離型剤を塗る塗油作業は未だ人手が主流です。塗油作業とは単なる金型からガラスを離れやすくするためだけではなく、 各種欠点を修正する役割もあり、作業員の技量の見せどころでもあったのです。これまでも様々な形で自動化が試されてきたものの、結果は今一つでした。そうした永遠の課題が、人間の動きを模したロボット化で変わろうとしています。既にヨーロッパでは導入実績があるとのこと。日本の大手でも検討中だそうですから、ガラスびんの製造現場の風景が大きく変わるのも時間の問題かもしれません。

 「グラステック」のような世界的なイベントともなれば、世界経済の現況を映す鏡の役目も果たすものです。毎回参加している方の感想を聞くと、 「今回は中国企業の出展が少なかったし、出展企業も展示規模は縮小しているね。中国や中東からのお客さんの数もずいぶん減ったようだ」と。中国経済の減速と、原油価格の低迷による影響がもろに出ていると言えるのではないでしょうか。それに比べて日本からの出展企業も増えたし、参加者も多かったとの声も聞かれます。とはいえ、それが必ずしも日本のガラス産業の復興を示すものと言い切れないところに、問題の根の深さがあるのだと思います。

代表取締役社長
七島 徹

2016.09.15

柏洋通信Vol.27

  【「食の大商談会」に行ってきました。】(9/15)

 9月2日、池袋のサンシャインシティで開催された「食の大商談会」に行ってきました。このイベントは北海道と九州の金融機関が主催するもので、フーデックスや食品開発展ほどの規模はありませんが、 北海道と九州(主に鹿児島が中心)の選りすぐりの食品メーカーが集結するという意味で、目の離せない展示会になっています。 当社のガラスびんをお使いのお客様の中には毎年出展され、常連となっている会社もあって、私も3年ほど前から毎年お邪魔しています。 今回は東北、北海道で猛威を振るった台風10号による被害からまだ日が浅いことから、予定通り出展されているのか心配だったお客様もありましたが、 皆さん大きな被害もなく元気なお顔を拝見することができ、ほっとしたところです。

 顔なじみのお客様とお話していたところ、お隣のブースから突然声を掛けられました。 鹿児島で製茶業を営んでいる方ですが、塩も扱っており、現在袋で展開している製品を、今度ガラスびんに入れて発売したいとのこと。 早速九州一円で展開されている某問屋さんをご紹介したところ、その晩「早速のご対応ありがとうございます。 問屋様よりお電話をいただきました」とのお礼のメールが届きました。ご紹介した問屋様の素早い対応に感謝するとともに、 こうした新しい出会いがあるのも展示会の醍醐味だと改めて感じました。

 北海道の白亜ダイシン様は、各種展示会に積極的に出展されています。あちらこちらでお会いするうちに、 五十嵐常務とはすっかり顔なじみになりました。今回ももちろん出展されており、当社の製品に入った新製品を最前列に並べていただいていました。 「びんの形状も含め大変評判が良いので、積極的に売っていきます」という、うれしいコメントも頂きました。

代表取締役社長
七島 徹

◆網走ビール様もご常連です。クラフトビールの好調はまだまだ続きます。


◆試食やポスターを駆使して新製品を強力にアピール。今後の展開が楽しみです。

2016.09.13

柏洋通信Vol.26

  【3回目の色替えを実施しました。】(9/13)

 今回は白から茶への色替えになります。色替えも3回目を迎え、白から茶へは2月に一度経験しているとはいえ、関係者とは時間の大幅な短縮など性急な試みは行わないことを改めて確認しました。 一度に多くの変更を加えると、仮に問題が発生した場合、原因の究明に困難を来すことになります。これは例えうまくいった事象であっても同じことです。 どのような場合でも、想定外は失敗と認識しなければなりません。我々にとって、結果オーライなど存在しないのですから。

 8月24日の17時より、色替えのために調合された原料の投入が始まりました。翌25日には早くも色調に変化が認められ、9時頃には生産を止め、ガラス素地を流す作業に移りました。 その後計画の則り、徐々に原料を茶本来の調合比に移行していきました。28日には比重、アルカリ溶出量、色調などが規定値に収まるところまで来ました。 そこで翌29日より、まず一本のラインで生産を開始。外部の専門機関に出していたガラスの組成分析の結果を待って、2本目のラインでも生産が始まりました。 そして翌30日には3本目のラインで生産が再開され、工場は6日ぶりフル稼働に戻りました。

 今回は前回、前々回には経験しなかった事態も発生するなど、まだまだ色替え毎に遭遇する課題は異なります。 お客様の信頼にこたえるため、今回の課題を徹底的に分析し、次回の色替えに備えます。

代表取締役社長
七島 徹

◆色調は早くも翌朝には変化が見られ、その後も順調に変化していきました。


◆定期的にサンプルを採取し、各種分析を行いました。


◆1ラインずつ慎重に生産を再開しました。

2016.09.03

柏洋通信Vol.25

  【第56期キックオフミーティングを開催しました。】(9/3)

 第56期のスタートに当り、8月27日にキックオフミーティング開催しました。

 当社のような溶解炉を持つ業態では、交代勤務制が不可欠です。その結果として全社員が一堂に会することは事実上不可能です。 全員が集まるためには操業を停止するしかありませんが、それでも溶解炉の火は消すことができないことから、最小限とはいえ保安要員が必要です。今回は25日から始まった色替えの最中ということもあって、生産は休止していることから9割程度の従業員が出席することができました。 それでも色替えのために流れ出るガラス素地を処理する役割と、溶解炉の保安・監視業務に従事する十数名には会社に残ってもらわなければなりませんでした。彼らに対して会社を代表して、改めてこの場で感謝の意を表したいと思います。

 さて、キックオフミーティングは1部と2部の構成です。1部は私を含む幹部社員が前期の振り返り、今期56期の目標を発表しました。 またQC活動、永年勤続者、改善提案活動の表彰式を執り行いました。今回私は「クレームの根絶と2%の改善で、持続的な成長を勝ち取ろう」と題して30分程話をしました。前期は窯修を行い、さらに白から茶、茶から白への色替えを、まだまだ改善すべき点は多いといえども、成功裏に終わらすことができました。 第55期は当社にとって大きな転換期となり、将来に向け得るものはすこぶる多かったと考えています。しかしながら、決して順風満帆ではなかったことも確かです。私は「良かった点と悪かった点が交錯した1年」であったと総括しました。第56期のスタートに当り、クレームを根絶してお客様の信頼を強固なものとし、持続的な成長を確実なものにするために、 営業も工場もそれぞれの持ち場で2%の改善に取り組むことを、全員で確認しました。

 こうして1部は終了し、会場を移して2部の労働組合主催の懇親会へと進みます。先ほども述べた通り、4直3交代勤務制をとる当社では、所属する班によっては事実上お互いに顔を合わせることのできない人たちが存在します。 そのため、今回のように従業員が一堂に会するイベントは、経営上は問題があるとはいえ、従業員同士の交流を深める上でなくてはならない機会だと考えています。乾杯のあいさつもそこそこに、ビール片手に次々とテーブルを回る人がいます。 たちまちあちらこちらで人の輪ができ、普段は遠く離れた本社の人間も、躊躇なくその輪に加わります。 カラオケに合わせて手拍子が始まり、いつしかそこに大勢の歌声が重なります。予定していた2時間はあっという間に過ぎ、一本締めでめでたく大団円を迎えました。

代表取締役社長
七島 徹
 
◆社長、工場長他から第55期の振り返りと、第56期の目標が発表されました。


◆100名以上の従業員が一堂に会し、達成すべき目標を共有しました。


◆場所を宴会場に移し懇親会が開催されました。グラスマン、グラスウーマンは誰もがお酒大好き。大いに盛り上がりました。

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